これと言って本気でなりたい夢もなく、走るのが早かったから体育の先生になれたらとか思ってたくらいでクラスでは、今で言うスクールカーストの中間くらい。ちょいちょい仲間を笑かすネタを仕込むのが好きでたまに前に出て先生のモノマネとかするクラスにひとりいるいるタイプ。
小学校の頃たぶん10歳頃、急に砂場の砂を食べたりするちょっとおかしくなった女の子がいた。3.4年生位まではおとなしい子でクラスのはじっこにいる子だった。おとなしすぎて目立ってるといえば目立ってる子だった。通学路の途中にある崩れそうな家に住んでいた。ほとんどしゃべらなくて声を出さない。休み時間はカーテンに巻き付きブツブツ言ってる。クラスでは声に出していじめられている感じではなく、みんなほっといて相手にしない感じだった。その子と仲良かった子が生まれつき片腕が紫色に腫れ上がる病気の子で、切断する手術を受けたあと学校を休みがちになった。その後からおかしな行動は目に見えて増していった。
わたしは毎日その子の姿を見てむずむずしていた。だけど仲良しの友達と遊ぶ事を優先してたまに気になりながら、だいたいはすっかり忘れながらドッジボールに明け暮れていた。
ある日、帰り道に見かけて声をかけて一緒に帰った。ひとりでカーテンに巻き付いてるのにドッジボールに誘いもしないで何もしないでゴメンと思う気持ちと、今おもしろい事をして笑かそうと思う気持ちがごちゃ混ぜになる。この時の感情は大人になってもむし返し、その道を通るたびに思い出して今もずっしり覚えている。
「かわいそう」と思ってる。
自分がその子を「かわいそう」と思ってる事がいけない事をしてるようで、どうしていいかわからなかった。それから校門横の砂場でたまに待って一緒に帰った。だんだん色んな話をしてくれるようになって、お兄ちゃんがどうだとかお母さんの仕事はどうだとか。お父さんはいないとか、テレビも洗濯機も家にはないとか。お腹いっぱい食べるのは給食だけだとか。家の中にも入れてくれた。お母さんがわたしに半分の冷たいコロッケらしきものをくれた。その子は飛び跳ねて凄く喜んだ。飛び跳ねすぎて床が割れやしないかと思った。真っ暗で電気がない部屋であちこちからギシギシ音がしていた。電気がないから宿題もできないと言ってた。話をしだすと半分以上聞き取れないくらい早口で、こんなに話せるんだと思った。わたしは「かわいそう」と思いながらそれを出さないようにしなくちゃと思っていた。
その後も彼女は休み時間はブツブツ言いながらカーテンに巻き付き砂場の砂を食べ、たまにちょっかいかけてくる男子を猛烈に叩いたり奇声を上げたりしていたけど、たまに一緒に帰る帰り道は平和だった。
ある日担任の先生から呼び出される。最近一緒に帰ってくれてるんだねな話。わたしは何かわからないけど職員室で大泣きした。
今思うと「かわいそう」と思いながら友達でいる事のなんとなく違う感や、わたしはわたしがその子を見てるとむずむずするから、わたしがむずむずしない為にそうしてたのにそれを喜ぶ彼女のお母さんへの罪悪感や、こっそりしてた事を先生にばれていたという事や、合ってるのか間違ってるのか分からないけど他に方法が分からなかった事や、色々が混ざってどうしていいか分からず先生にも説明できず泣いたのかもしれない。何かわからないけど大泣きした。
それからもたまに一緒に帰ったりしながら高学年になると部活や習い事など忙しくなり、彼女との帰り道も減っていった。
その後、彼女は精神病院に入院する事になる。
今でもたまに思い出す。たぶんわたしが10歳とかそれくらいの頃の事。
10歳でも10歳なりに複雑に悩んだり考えてる。親に話さない事をしている。自分の感情や行動が説明できない事もするし起こる。だから10歳くらいの子に会うと(あーあれくらいは考えたりしてるんだろなー)と思う指針にしている。
※パソコンに10歳くらいの写真がなくて6歳くらいの。
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