完全変態

虫を育てるのが好きです。
蝶やカブトムシなど幼虫から蛹になる蛹化そして羽化する事。これを「完全変態」というらしい。蛹になる過程がなくカマキリやバッタみたいに脱皮などして成虫になる虫を「不完全変態」というらしい。あとノミなんかの形は変わらず大きくなるのが「無変態」。

変態変態言う。
あの変態とこの変態は漢字までばっちり同じでこれは外国の人なんかにはきっとWhy?だろう。そしてわたしは「完全変態」が最も好き。もう一度書くとわたしは「完全変態」が大好きです。

毎年蝶などを羽化させている。卵から幼虫になって蛹化し羽化する過程を覗かせてもらう。神秘的でその瞬間は静かでエキサイティングで息をのみ、動悸息切れがするくらい。

アオスジアゲハの幼虫が脱皮して蛹化する瞬間をタイムラプスで撮った。これを撮りたくてタイマーリモコンを購入しカメラを丸2日セット。蛹化が始まるまでえぐい量のただじっとしてる幼虫の写真が撮れた思い出。最後に脱いだ皮を落とすシーンは愛しさ倍増する。

そして羽化。この時のメモ。
「6/23 18:30頃より幼虫の色が透けてきた。
20:00頃全体に黒くなる。
24:00頃ところどころに皮が体から離れて浮いて来てるようになる。
1:00頃全体が白っぽくなり手でぺりぺりとめくれそうな感じの皮に。
1:30頃ツノがぴりぴりとやぶけて出てきた。
1匹目羽化後、3分後くらいに2匹目の羽化が始まる。
2匹目はケースの蓋に蛹を作っていたので、羽化後羽を乾かす時に掴まる枝などセットができず、苦肉の策で木綿糸を3本頭の上に張った。上手く掴まってくれるか心配だったがふらふらしながら上手に掴まってくれた。」

この変わりっぷりが完全変態を覗き見する最高の醍醐味。蛹の中で何が行われているのか。これを調べたらなんだかファンタジーがなくなりそうで調べていなかったけど、知らないまま逝ってしまうのも後悔するし、逝くギリギリに娘と息子に「蛹から羽化まで中身がどうなってるのかググって...早く...」というのもアレなのでとうとうサクッと秘密の花園の扉をグーグルで開ける。


幼虫が酵素を出して体の大部分の組織を壊し、たんぱく質を組成する。よくどろどろのスープのようなものに溶けると言われるがいくつかの器官はそのまま残り、筋肉のような組織は再利用できる細胞の塊に解体される。レゴの模型をバラバラにするようなものだ。いくつかの細胞は、触角、目、足、羽など成虫の体のパーツを作る原基となり、サナギの中身のスープは、いわば有機物のつまっただし汁のようなものだ。

スープとかだし汁とかレゴとか!えええええ!

蛹の中で基盤になるパーツとだし汁とにドロドロに別れてバラバラになって完全に違う形で再構築。10日から2週間とかの間に。小さな幼虫の極小に小さい細胞の基盤の中に「さっきまでは目が6粒に分かれていたけど、一旦溶けて再構築時には6粒くっつけて1つの複眼になりますよー」とか記録がメモってあるのか。目ン玉のひとつくらいお尻にくっついても仕方ないスペースでの仕事だろうに。そして羽はどのドロドロ部分からなのか?ぷにゅっとした脂肪っぽい部分からしか考えられないけど、量的にも何的にも足らないしだいたい「飛ぶ」ものの構築。
やっぱり不思議で神秘的。秘密の花園はわたしに寄り深くファンタジーを増やしてくれた。

シーズン到来。今年もケースは準備万端。
わたしはやっぱり完全変態が大好きです。



えっ。

花屋・絵描き。 花屋併設の絵画教室とライブスペースを経営しています。 開始当初につき思いついたまま書いているのでごちゃごちゃすると思います。 2017年4月より